2011年9月9日
「いただきます。」 藤井まり著 佼成出版社
著者は、僧侶であるご主人とともに精進料理に携わり、現在は招かれて全国で料理講習会などを開いていらっしゃいます。
精進料理はシンプルで健康にも良さそうだから作ってみたいと思うのですが、下ごしらえなどが大変そうで時間がかかりそう…と思うとヤル気が全く起きないのです。しかし、この本には3章からなるエッセイの章の合間で精進料理レシピが42品紹介されていて、そのほとんどが、このズボラ系の私でも作ってみたいと思う程、作り方もシンプルです。
料理の技術の上手下手よりも、思いを込めることが大事であると説かれています。曹洞宗永平寺を開いた道元禅師は「典座教訓」という書物を残しているそうで、(以下引用)
それによると、料理をする時の心には、「喜心」「老心」「大心」の三つがあります。
「喜心」とは、読んで字のごとく、よろこびの心をもって調理をするということです。
いまこうして調理させていただけることを幸せと感謝し、食べてくださる人を思いやって作らせていただくのです。本当においしい料理というのは、まさに「喜心」いっぱいで作られた料理です。人のために料理を作る幸せな気持ちは、作る料理の味にも、不思議な程に影響してくるのです。
また「老心」とは、親が子を想うような気持ち、つまり大地がわれわれを慈しんでくれるような気持ちで料理にとり組むことです。
食べる人のために、食べやすい大きさに切ったり、味つけしたり、見た目もおいしそうに美しく器に盛りつけて、気を配るということです。
私も二人の子どもを育ててきましたが、はじめて離乳食を作った頃の緊張感を思い返すと、このことがスッと胸に落ちてきます。自分が作る食事が目の前の小さなこの子の命を養うもとになるのだと思うと、その責任はとても重大と思えました。母親が子どもにできる大切なことの一つは、よい食事を作り、健康で丈夫に育てることではないでしょうか。
最後の「大心」とは、偏りのない広い心です。いつも平常心を保ち、とり組むということです。気が向く、向かないなどの気分に振りまわされて料理することのないよう、安定した心を養っておかなければなりません。
家庭において、料理という家事は、日々、たいへんな仕事です。忙しかったり、疲れていたり、体調がよくなかったり、と状況は毎日変化します。
ですから、つねにこの三つの心持ちを維持して料理するというのは、なかなかかんたんなことではないかもしれませんが、まずは、頭の片隅に料理を食べる人のことを思い浮かべて料理してみることから、始めてみてはどうでしょうか。
はい。精進いたしたいと思います。合掌
カテゴリー:本(エッセイ), 本(料理) | コメント (0) | 投稿者:兵藤 由香
トラックバック
トラックバック URI» https://www.kurashinodogu.jp/kawaraban/archives/480/trackback