2010年5月22日
「宮中の食器」 毎日新聞社
図書館の棚にあるのを発見し、興味を持ったので借りてみました。
写真で紹介されているのは、国賓晩餐用、公午餐用の食器、銀器、ガラス器とカトラリーと祝宴用和食器です。国賓は、国王・大統領および元首級の者、公賓は首相または同相当の者だそうです。国賓か公賓かで、使用される食器やカトラリーが違うのだとか。
国賓を迎えての公式晩餐会は皇居宮殿内の豊明殿で催され、150余席の正餐に対応できる一番広い部屋です。一人当たり約80cm幅で食器類が並べられます。国賓晩餐時のテーブルセッティングが見開きでこの本の始めに出ています。
宮殿内の宴席用のガラス食器は大きく三種に分けられるというのも興味深いです。
第一が、グラヴュール(研磨材を塗った銅円盤を回転させて面を彫り込む)という加飾法による薄づくりで「御旗御紋」(明治4年の新貨条例発布の際、発行された旧20円をはじめとする金貨に用いられた図柄)を配したもの。宮内庁では戦前から「英製」と伝えられていて、おそらく明治22年以前に特別な誂えものとして注文をしたものらしいのですが、どこで作られたものか不明ということと、100年以上経った今も現役で使われているというのに驚きます。
第二が、グラインダーにガラスを押し当てて面を削り、後で磨き上げるカット技法(切子)によるやや肉厚のガラスで「菊御紋」を配したもの。こちらは日本製で、明治中期の岩城硝子の納品が始まりです。
第三は、プレーンなガラスにサンドブラストとグラヴュールで「菊御紋」を配したもので、全て戦後のカガミクリスタル株式会社製です。
庶民の私には一見の価値が十分にありました。